<-THE G-> 「成人指定」1今売れている時計は電波時計である。 それが太陽電池式だとさらに売れる。 時勢の流れは<電波ソーラー>時計である。 機械式時計が見直されているとは言え、この流れはもう誰にも止められないだろう。 かつてコンパクトディスク(CD)が音楽再生メディアとして大量に出尽くしたとき、従来のアナログ式レコードが見直された。 だからと言って、再びアナログレコードが主流にならなかったことは周知の事実であり、アイポッドに代表されるデジタル信号だけを消費者との取引材料にするマーケットが定着した今日、アナログレコードが主流を占める日が将来やって来るとはなおさら誰も考えはしまい。 腕時計においても同じである。 不便で高価で不正確な時計より、便利で安価で正確な時計が重宝されるのはごく当然であり、そうでなければ誰もしのぎを削って開発しようとはしない。 僕のように機械式時計に傾倒する人間は、どこかヒネクレ者であろう、と僕は信じている。 現在電波ソーラー時計の商品化で先頭を走っているのは、シチズンとカシオ。そして、少し遅れてセイコー。 全部日本のメーカーというのがすごい。 Gショックのように種類の豊富な物は機能別、仕様別、など、<切り取り方>によって、色々な分類分けができてしまう。 例えば、同じ「マッドマン」シリーズの中には太陽電池のものとそうでないものがある (=シリーズ別の切り取り方) そこで、太陽電池式の物を追っていくと、今度は「マッドマン」シリーズはその一部でしかなくなってしまう (=機能別の切り取り方) という具合だ。 そういう時、僕は型番を追うことにしている。 生産する側の都合で振り分けられる「型番」を追っていくと、メーカーの宣伝文句とは別に、より真相に近い部分が見えたり、生産のプロセスが推測できて面白い。 このページでは「電波時計」+「太陽電池時計」の2つの機能を持つ Men's G-SHOCK 「THE G」を「型番」(=品番)という側面から取り上げた。 もちろんこれも<切り取り方>の一例に過ぎない。 -THE G-とは THE Gのコンセプトは 『壊れない、止まらない、狂わない』 である。 これはつまり、 壊れない=「対衝撃構造」だから。 止まらない=「電池交換不要!」とカシオが宣伝している光発電機能「タフソーラー」を備えているから。 狂わない=「電波受信機能」が毎日定時に時刻合わせをするから。 ということである。 <THE G>の名が冠してあれば、「電波(wave ceptor) + ソーラー電池(tough solar)搭載」のGショックであることが一目でわかる。 現在、「電波(wave ceptor) + ソーラー電池(tough solar)搭載」のGショックは「THE G」を冠し「MR-G」「GIES」シリーズにも投入されている。 このうち「MR-G」「GIES」には電波受信機能もソーラー電池仕様も採用していない古いモデル(MR-Gは1996年7月、GIESは1998年10月に初登場)が存在するため <MR-G、GIESであれば「電波ソーラー」である。> とは必ずしも言えない。 それに対して <THE Gであれば必ず「電波ソーラー」である。> と言い切れる点でTHE Gはスペックがわかりやすい。 型番「GW」について THE Gの代表的型番は「GW」で始まる。 フロッグマンを除いて「GW」で始まる型番は、電波時計のものである。 これは、初代電波Gショックの「アントマン(antman)」(2000年10月発売)の型番を引き継いでいるからだ。 初代ウェーブセプター GW-100-9JF「アントマン」 ところが、「アントマン」が誕生して間もなくアンテナの改良(=小型化、高精度化)がなされ、時計本体にアンテナを埋め込むことに成功したため、 アンテナが外に突出しているこの初代モデルの出番はすぐになくなった。 ペットネームまで考えたのに「アントマン」は一代限りのモデルなのである。 一方、「アントマン」登場より以前にタフソーラーの開発は進んでいて、1998年に初代タフソーラー搭載機が出ている。 DW-9300J-1(=「レイズマン(raysman)」)。 初代タフソーラー DW-9300J-1「レイズマン」 この型番に注目してもらいたいのだが、現行モデルにおいて型番に「DW」を冠したものでタフソーラー搭載モデルはない。 でも、かつては「あった」のである。 つまり、初めのうちはタフソーラーを「DW」の型番を持つベーシックなモデルに実験的に搭載してみた、ということであり、 その結果、世の中のニーズが多いという感触を得たメーカーが技術革新を急ぎ、後に一般化、量産化し、独立した型番を持たせた、という流れが見て取れる。 その頃に、同じく需要の多かった電波時計の開発も進んだ。 「アントマン」が一代限りで終わった事実がその開発スピードを証明している。 当初この初代電波受信モデルにはタフソーラーは搭載されていなかったし、おまけに福島局しか受信できなかったのである。 2年後・・・機能はいちじるしく進歩した。 もちろんその裏には開発スタッフの努力があっただろうが、シチズン社という電波時計のライバルを横目に見ながらの開発であったこともそのスピードが速まった要因であろうことは想像に難くない。 セイコー社はこの開発競争に乗り遅れたので、現在までのところ、この分野に関してはカシオのライバルではない。 電波腕時計の先駆者は世界で初めて開発を成し遂げたドイツのユンハンス社を除けば、日本のシチズン、そしてカシオの2社である。 さらに言うなら、地球上に5本しかない電波塔のうち2本が日本一国にある。 まぎれもなく、日本は電波時計大国である。 2002年11月 <THE G> 初登場 開発が進むと、カシオは早速2つの機能、つまり、電波受信機能と光発電機能を合体させたモデルを発表。 それが「THE G」である。 上にも書いたが、「THE G」の発売は2002年11月開始だから、アントマン発売からたったの2年しかかかっていない。 かくして「THE G」に取って代わられた「アントマン」「レイズマン」はその短い命を終え、タフソーラー搭載モデルは「THE G」に吸収された形で型番「DW」から姿を消した。 現在<電波時計ではない太陽電池搭載型Gショック>は、「DW」と同じくベーシックモデルに冠せられる型番「G-」の一部に存在するが(例:G-7210-1JF , G-2800-1JFなど)、全体から見ると数は少ない。 カシオが力を入れているのは、あくまで、電波とソーラーの一体型であることがわかる。 一言で言えば、「アントマン」と「レイズマン」が合体して「THE G」が誕生したのである。 初期「GW」機の型番の揺らぎ 初代「THE G」の型番は GW-300J-1JF である。 これ以前は、GWの型番を関したモデルは GW-100 が上述アントマン、GW-200がタフソーラー搭載のフロッグマンであり、 それぞれGW-100はタフソーラー搭載ではないし、GW-200はウェーブセプター搭載ではない。 「GW」が「THE G」になる・・つまり、電波受信機能と光発電機能の合体型モデルの代表的型番になる・・のはGW-300からという中途半端ぶりである。 (あてずっぽうだが、GW-100もGW-200も左右非対称のスタイルなので一緒にしちゃおう、という安易な発想ではなかったか?) このあたりに、カシオが新モデルを投入する際にしばしば見せる<型番の揺らぎ>がある。 1980年代の黎明期ならともかく、2000年になってからこの有様では少々みっともない。 消費者サイドが後々、分類化してGショックを理解しようとするときに要らぬ苦労をすることだろう。 とはいえ、GW-100もGW-200ももう生産されてない(特にフロッグマンに至っては、一般人にとってはとても入手し難く初めから生産されていないのも同然だ) から「GW」は今や「THE G」専用の型番であると言える。 これからのサーチでは頭に「GW」と付けば、電波ソーラーだと思って差し支えない。 GWに続く数字の違いは単にデザインの違いによる。 新旧による、とか、サイズ、機能、グレード、価格の違い、などの要素は一切ない。 以下は現行モデルの型番。 「THE G」なら必ず「電波+ソーラー」である。 では、「THE G」なら必ず型番は「GW」か? 答えはNOである。 例えば、AW-500 はデジアナ・コンビの代表格であるが、これが「THE G」に進化した物の型番は AWG-500 であるし、 Gショックのフラッグシップモデルである「MR.G(ミスターG)」の型番は「MRG-・・」である。 このように、かつて開発されたGショックが電波ソーラーとして復刻してきた場合、その伝統を受け継ぐものであることをアピールするために型番を引き継がせている。 今後も「GW」機種が圧倒的多数であり続けることに変わりはないだろうが、「AWG」のように新しい型番を持つ「THE G」が増えていく可能性も非常に高い。 *MTG(メタル ツイステッド)はMRG(ミスターG)と混同しやすいので一応注意が必要* ぜんまい時計しかなかった時代から考えたら、まったくもって夢のような時計である。 <時計、ほっとけい>時代の到来。 もしどこかの林で白骨死体が発見され、その腕に「THE G」が空中を向いて巻かれていたなら、それは主人の死にお構いなく、骨だけになった腕の上でただ淡々と一秒違わぬ正確な時を刻み続けていることだろう。 電波ソーラー時計とは、そういう時計である。 これこそ本当の「機械式」時計ではないだろうか?
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